みんなだいすきおなほとーく

普段は火神×氷室なので氷室×火神となったときに氷室が喘ぐ



 手を動かすたびにカップと兄の間からあがる、ちゅぽちゅぽと濡れたものが詰まってはこすれる独特のあの音が、熱を帯びた寝室を埋めていた。先端のホールを指でふさぎながらわずかに左右に回しつつ、一定の間隔でカップを上下に動かし続ける。後ろから抱いた兄はカップを動かすたびにひくひくと悶え、広げた脚を火神のそれに絡めた。
 汗の染みたシャツの裾から直に触れている胸の尖りを指先でくりくりと捏ねる。とうに形を持ち、つんと上を向いたそれを指の腹で時につよく、時にやさしくいじってやれば、兄はせつなく声を上げる。
 汗をかいた首筋を襟足に向けてつうと舐めれば、ひりつくような塩気がした。火神を椅子にするように腰をつけた兄のつながっているそこはカップを動かすたびにくつくつと締まり、ほてったなかは動きのない火神の雄をひたひたと包み込む。

「たいが、あ、はっ、あぁ」

 いきり立てさせられた雄を性具に包まれ、後孔は慣れ親しんだものに貫かれ、汗に濡れた身体を思うさま扱われる。
 開け放ったカーテンから明るい昼の光が室内を照らしている。火神の家に着いてすぐに寝室へ案内され、まだバスケもしていない。下半身の衣服のみを取り払わされ、あれよあれよと弟に言いくるめられた結果がこの姿。身体のあちこちからあがる脳髄を灼く快楽に、ぼうっと手放しそうになる意識をどうにかして引き留める。
 入り交じる汗のにおいに、閉じきった室内に満ちる熱。なにより、すぐ目の前でカップに包まれた己の性器がぐぽぐぽと音を立てて扱かれるのが羞恥をあおる。
 いつかロッカーで見た赤と白の縞模様のマラカスはぐっぽりと氷室の陰茎を根元まで飲み込み、女性の膣内であるかのような生々しいきもちよさを伝え続ける。押し込むだけならばまだしも、弟の広い手が思うさま抽出を繰り返すのだからたまったものではない。それも男のすきな、というより氷室の弱い角度ばかりを責め立てるのだから、氷室はあっという間に根を上げた。

「ぱんつは、なかったけど……こんなの……ッ、聞いてない……」
「オナホ知りたいって言ったのタツヤだろ」
「でも、こんな……ことに、つかう、なんて……」

 胸をくつくつといじられながら、堅く浮いた睾丸を絶妙な加減で揉まれる。とうに迫り上がるような射精感で満ちていた氷室の後孔を、念押しのように火神が突いた。
 ぐちゅぐちゅと勢いをつけてカップでしごかれ、くっと咽が反った。つまさきに力がこもり、両脚が針金のように伸びる。桃色に染まった十の足の指は天井を向いていた。

「ぁ、やだ、たいが、たいがぁ、いっちゃうぅう……!」

 あっ、あ、あ。喘ぐように声を漏らしてカップの中に精を放った。下腹が固くはりつめ、こまかに痙攣する。弟をくわえこんでいるそこは衝動に従ってひくひくと締め付けるも、依然として弟は達する気配がない。
 ゆるやかな余韻によって身体のあちこちをひくつかせる氷室から、弟が離れた。全身の力を放って、ベッドに寝転がる。枕を頭に取り寄せる気は失せていた。
 汗でしとどに濡れたシャツが邪魔で気持ち悪い。胸元に下がっているはずの指輪は鎖の位置がずれて、留め具がうなじから離れてしまっている。
 氷室に馬乗りになった弟がカップを引き抜いた。縞模様のカップに仕舞い込まれていた陰茎がゆっくりと顔を見せる。それはまだ堅さを持ち、熟した桜桃のようにみずみずしい粘膜に色づいていた。内部にローションか何かが入っていたのか、濡れた半透明のしたたりが放ったばかりの精液とまざって陰茎を照らしていた。それはいまだ腹を向いた氷室の茎をするすると落ち、皺の多くなった胡桃につややかな溜まりをつくる。
 シーツに寝転んだ氷室の乳首は、中途半端に放られた熱のせいでいまだつんと立ち上がり、じくじくとその先を訴えている。自分でいじってしまいたいのを堪えて、氷室は腹の上の火神に目を向けた。さっきまで弟の居座っていたそこが、むずがるような飢えでもって物欲しげに開いている。
 いくら性器で達しようと、それだけでは満たされない。もっと別の、慣れ親しんだ後孔への突き抜けるような快楽がなければ、セックスをしたとはいえないのだ。
 おなほーるの使い方はわかった。次はこちらをおなほにする番だろう。氷室は力の抜けた身体で、弟に訴えた。

「たいがぁ……」

 火神はまたがった兄の腹の上でカップの穴に指を差し込んだところだった。樹脂でつくられた精液を搾り取るための構造。狭い中道を抜け、精液のたまった奥へ届けば、兄の身体で行うのと同じ動作で熱いえきたいをだらだらと掬い落とす。右手はたちまち白のまじったぬめるそれで濡れた。
 人差し指と中指と。指にたまったそれを火神は親指でいじくり糸を引かせると、自らの後孔へあてがった。ひとつ、ふたつ、みっつ。あらかじめ用意をしていたそこは労することなく火神の指を飲み込む。案ずることはないだろうと早々に火神は兄の屹立を支え、立場こそ異なるが兄の好む格好で膝をついた。
 弟の名が書かれたカップがシーツの海で転がる。先まで氷室がはいっていた底部は、白いキャップで固く閉じられていた。
 ああ、キャップとはこのことだったのか。そうしたことをぼんやりと思いながら、抜いたばかりの敏感な先端にあの感触がぬるりと伝わる。氷室はひくりと口元をふるわせた。

「え、や、うそ」
「こっちのタイガも試してけよ」

 ローションでぬめった後孔へ、かたちを味わうためにゆっくりと兄を迎え入れていく。つながったその下から兄が惚けた声で抗うも、火神にはそれすら好い。
 まるみのある尖った雁首が直腸をぐつぐつと拓いていく様。ローションのせいで障害も痛みもなくつるつると入っていくのは物足りなかったが、久しぶりの身にはこのくらいがよいのだろう。
 かたちをもった先端が通り過ぎれば根に向かうにつれ、逞しい幹が拓いた穴をよりそのかたちに押し広げる。
 兄の茂みが尻を撫で、火神は下腹にひたりとついた。
 根元まで兄に貫かれている。迎え入れた性器に、火神はぞくぞくと背をふるわせた。やっぱ挿れるならタツヤのが一番だよな。
 火神の陶酔をよそに、眼下の兄は濡れたまなざしを強いてきっと鋭くし、手で火神の腹を突いては退かそうとする。知ってか知らずか、シャツの裾がめくれてぽってりと色づいた胸の尖りがふたつとも露わになっていた。くちゃくちゃになって首元でまとわりつくシャツの下、うすもも色に染まった肌に指輪が落ちているのに趣を感じる。

「やだ、やだたいがぁ……っ!! き、つ……きついんだよおまえは! もっとゆるくなれよ!」
「タツヤが穴ばっかはくはくさせて入れねえからこうなんの」

 放っておかれるままのゆるい穴に指を差し込めば、こわばっていた肢体は紅茶に落ちた角砂糖のように弛緩した。ふっと力の抜けた身体を幸いとシーツに足の裏をつけ、部活時の準備運動と同じ体で腰を振る。 
 まずはゆっくりと引き上げ、焦れるように戻す。兄のかたちがよくわかるやり方で数度味わい、勢いをつけた。ぱちゅぱちゅと結合部は音を立て、重なる尻と腹が張り手のように響く。首に下げたままの指輪がかくんかくんと揺れては戻った。氷室は指輪を下げたままこの姿勢で幾度となく火神を搾り取ったが、揺れるそれを気にすることなく身体を動かす。経験の浅い火神では指輪が邪魔に思うのだが、やはり兄となれば揺れるそれすら楽しむのだろう。

「どけろたいがっ……どけろよこのやろお……!」 
「やーだー。いいじゃん別に。俺からこうしてごほーししてやってんだから、たまには寛げば?」

 兄がふざけるなと火神の割れた腹をぺちぺち叩く。あっあっあと喘ぐばかりでされるがままの兄は、涙ながらに文句を言った。

「っ……タイガとするんだったら腰がくがくになるまで突かれた方がきもちぃいにきまってるだろぉ……! ふっあ……ぎゅうぎゅう閉じた括約筋で竿ごすごす扱かれて、なかはハリのあるみずみずしい腸壁で挟まれて……タイプの違う二段構造に根元までフルスクワットであっというまに絞られちゃうよぉおお」

 兄は整った眉を耐えるようにしかめ、ぼろぼろと涙を流し懇願する。腹の中の屹立はみちみちと膨れ、根元はぴくぴくと脈打っていた。先走りで濡れているだろう先端を、兄にとってきもちのよい加減でこつこつと叩いてやる。
 火神は得意げに腹の上から兄を見下ろした。いつもと違って小悪魔っぽく、くちびるを愛らしく歪ませて。

「今度は俺にいっぱいちょーだいおにーちゃん」
「ふぁあ年下っ子(おとうと)のおねだりらめぇええ……ッ! っ、くぁ」

 股下の肢体ががくがくとのけぞり弾ける。途端に腸壁に熱いものが迸った。一度目の射精からそう経っていないというのに、兄は多量の精を吐き出しているようだった。
 火神は自身の腹に手を当て、毎秒ごとに注がれていくあの感触を味わう。萎えない兄で塞がれて、腹の奥は兄のものでたっぷりと満ちていく。

「あ、すげ。腹にぴゅるぴゅる入ってる。あったけー」

 苦しげに何度も息を詰めて身体をこわばらせる氷室から最後の一滴まで搾り取ると、気が済んだ火神は腰を動かした。力を失った陰茎をずるりと抜けば、ゆるんだ後孔から白濁が伝い、腿へゆっくりと垂れていく。その感触すら心地よく思いながら火神は兄のとなりに寝そべった。
 茜に染まった陰茎を垂らし、仰向けのまま息を整える兄の額にくちづける。兄ははあと息を吐いた。

「……くっっそきもちよかった。ありがとうタイガ」
「おう俺も楽しかったわ。たまにケツつかわねえとやべえなーカビ生えそう」

 兄が顔を寄せて火神にくちづけを落とす。くちびるを重ね、食むだけの軽いそれで戯れて、どちらからともなく笑った。
 上体を起こした兄が背伸びをするようにシャツを脱ぐ。適当に床へ放って、いまだ勢いを持つ火神の股下に顔を埋めた。それが何を意味するのかわかっているから、火神はひそやかな笑みとともに放られたままの枕を引き寄せ、頭を乗せる。何も身につけていなくとも、やはり兄は指輪を外す気はないらしい。
 氷室が乾き始めた火神のそれをぴこぴこと指先でつつく。道ばたに生えるつくしかたんぽぽのような扱いに、くちびるがむずむずとくすぐったい。

「オナホはもういいだろ? 今度は俺がご奉仕してやるよ」

 そのあとバスケな。
 念押しする兄に、火神は眉をよせてくしゃりと笑った。